議会報告

福岡中学校工事の議決前着工について|第56号議案に賛成した理由

福岡中学校工事の議決前着工

なぜ第56号議案に賛成したのか

令和8年6月のふじみ野市議会で、ふじみ野市立福岡中学校校舎A棟長寿命化予防改修工事をめぐり、通常ではあってはならない事態が明らかになりました。

議会の議決を必要とする変更契約に関わる追加工事が、議決を受ける前に着工され、その大半が既に施工されていたというものです。

私は第56号議案の討論で、この問題を「単なる事務的な手続のミスとして片づけてはならない」と指摘しました。

一方で、最終的には第56号議案に賛成しました。

重大な問題だと考えているのに、なぜ賛成したのか。

今回の記事では、令和8年6月19日の採決時点で、議会審議等を通じて私が確認していた事実と、その時点でどのように考え、判断したのかを整理します。

福岡中学校の工事で何が起きたのか

第56号議案は、福岡中学校校舎A棟の改修工事について、追加工事を行うための請負変更契約について議会の議決を求めるものでした。

追加された主な工事には、

  • 木工室やコンピューター室の普通教室化
  • 美術室や多目的室への空調設備の整備
  • 外灯照明のLED化

などが含まれていました。

35人学級への対応や学校施設の有効活用、暑さ対策など、生徒の教育環境を整えるうえで必要性の高い工事です。

しかし、ここは明確に分けて考えなければなりません。

子どもたちの教育環境を良くするという目的が正しいからといって、必要な手続を経ずに工事を進めてよいことにはなりません。

今回問題となったのは、工事の必要性ではなく、その進め方でした。

議会審議で明らかになった経緯では、追加工事は3月27日に着手され、4月27日までには大半が完了していたとされています。

しかし、この変更契約は議会の議決を必要とする案件でした。

本来であれば、工事を進める前に議会が変更契約の内容を審議し、認めるかどうかを判断する必要があります。

今回は、その判断より先に工事が進められていました。

なぜ「議決前着工」が重大な問題なのか

議会の議決は、単なる形式的な手続ではありません。

一定規模以上の契約について、市民の代表である議会が、

「本当に必要な契約なのか」

「内容や金額は適切なのか」

「市としてこの契約を締結してよいのか」

を確認し、判断するための重要な仕組みです。

ところが、議決を受ける前に工事が進み、既に施工されてしまえば、その後に議会が「この変更契約は認められない」と判断することは極めて難しくなります。

施工した事業者への支払い、学校現場への影響、市の財政上の問題など、新たな課題が生じる可能性があるからです。

つまり、議会が本来自由に判断できるはずだった状況が、工事が先に進められたことによって大きく損なわれてしまいます。

議会の判断が、結果として既に行われた工事を後から認めるだけの「追認」になってしまうのであれば、二元代表制の仕組みそのものに関わる問題です。

私は討論でも、今回の事案について、議会制民主主義や二元代表制の観点から極めて重く受け止める必要があると述べました。

「違法工事」と単純に断定するのではなく、確認された事実を見る

今回の問題については、重大であるからこそ、言葉を正確に使う必要があります。

6月定例会の審議では、市側から、一連の手続には瑕疵があり、違法性の可能性を否定できない不適切な状態であるとの説明がありました。

また、市議会が可決した附帯決議でも、議決前に追加工事へ着手し完成させていたことについて、

「地方自治法及び市条例において不適切な行為」

と位置付けています。

したがって私は、単純に「違法工事だった」という言葉だけで片づけるのではなく、

何が行われたのか。

なぜ必要な手続を経る前に工事が進んだのか。

なぜ組織として止めることができなかったのか。

そこを正確に検証する必要があると考えています。

一人の担当者だけの問題で終わらせてはいけない

私が特に重要だと考えたのは、今回の事案を一人の担当職員の問題だけで終わらせないことです。

追加工事が実施されるまでには、

工事内容の検討、

工事の指示、

現場での施工、

契約変更の手続、

庁内の決裁など、

複数の段階があります。

それにもかかわらず、結果として議決前着工を途中で止めることができませんでした。

私は討論で、複数の段階を経ながら議決前着工を防ぐことができなかったこと自体が、組織としてのチェック体制に課題があったことを示しているという趣旨を述べました。

再発防止に必要なのは、「次から気をつける」という対応ではありません。

担当者個人の記憶や経験だけに頼らず、

  • 議決が必要な契約であることを確実に確認できる仕組み
  • 部署をまたいで確認できるチェック体制
  • 工事の進捗状況を管理職まで共有する仕組み
  • 契約変更が発生した場合の庁内ルール
  • 管理監督体制そのものの点検

など、組織として同じことを起こさない仕組みをつくる必要があります。

それでも第56号議案に賛成した理由

ここが、私にとって最も難しい判断でした。

私は、今回の手続に重大な問題があったと考えています。

そして、先ほど述べたとおり、子どもたちのために必要な工事だったからといって、議決前に工事を進めてよいとは考えていません。

その点と、第56号議案への最終的な賛否は分けて判断しました。

本来であれば、議会は工事が始まる前に変更契約について審議し、賛成するのか、反対するのかを判断するべきでした。

しかし、私たち議員が第56号議案への判断を求められた時点では、既に追加工事は進められ、その大半が施工されていました。

これは、本来議会が置かれるべき状況ではありません。

そのような状況の中で議案を否決した場合、行政内部の問題だけで終わるとは限りません。

既に工事を行った事業者への支払いの問題、学校現場への影響、市の財政上の問題などを通じ、結果として市民に新たな不利益が生じる可能性があります。

議決前に工事を進めたことへの責任と、その時点で既に生じている状況に議会としてどう対応するかは、別の問題です。

私は、行政の手続上の問題を理由として、その負担を事業者や学校現場、市民にさらに広げることは避けるべきだと考えました。

そのため、問題となった手続を容認するのではなく、既に工事が進んでしまった状況の中で、市民への新たな不利益をできる限り生じさせないための苦しい判断として、第56号議案に賛成しました。

これは、積極的に「問題はない」と考えて投じた賛成票ではありません。

「賛成=今回の手続を認めた」ではありません

私は討論でも、

「本議案への賛成は、今回の手続を容認することを意味するものではありません」

と明確に述べました。

今回の第56号議案への賛否と、

「なぜ議決前に工事が行われたのか」

「なぜ組織として止めることができなかったのか」

「どこにチェック体制上の問題があったのか」

「どうすれば同じことを二度と起こさずに済むのか」

という問題は分けて考える必要があります。

そして、もう一つ大切なのは、本来、議会がこのような難しい判断を迫られる状況そのものを生じさせてはならなかったということです。

議案に賛成したからといって、その点まで曖昧にしてよいとは考えていません。

第56号議案は記名投票により、有効投票20票のうち賛成13票、反対7票で可決されました。

私も賛成票を投じました。

市議会は附帯決議で原因究明と再発防止を要求

第56号議案の可決後、市議会では附帯決議も可決されました。

附帯決議では今回の事案について、

  • 組織的な問題を含めた徹底的な原因究明
  • 契約事務に関する全庁的な職員研修
  • コンプライアンス意識の徹底
  • 市長や議会への迅速な情報共有
  • 報告・管理監督体制の見直し
  • 再発防止策の策定と公表

などを市に求めています。

つまり、変更契約を可決したことによって、今回の進め方まで議会が認めたわけではありません。

むしろ、契約への対応と、議決前着工という問題の原因究明・再発防止を切り分けて考える必要があります。

そして、附帯決議を可決すること自体がゴールでもありません。

そこで求められた原因究明や再発防止策が本当に実行され、実際の契約事務の中で機能する仕組みになったのか。

その後まで確認することが必要です。

今後、議会として確認していくこと

今回の問題は、「学校の工事が予定より早く進んでしまった」という話ではありません。

市役所では、道路、学校、公共施設など、多くの工事や契約が毎年行われています。

予算を議会が審議し、

必要な契約について議会が議決し、

行政がその範囲の中で事業を執行する。

こうした手続が守られることで、市民のお金が適切に使われているかを議会がチェックする仕組みが成り立っています。

だからこそ、今回の問題を、一人の担当者の失念や一度限りのミスとして終わらせてはいけないと考えています。

今後重要なのは、誰か一人の責任を追及して終わることではなく、なぜ組織として防ぐことができなかったのかを明らかにし、同じことを二度と起こさない仕組みが実際につくられることです。

そして、その仕組みが本当に機能しているのかを議会として確認し続ける必要があります。

行政の誤りをチェックすること。

そして、市民に新たな不利益を生じさせないこと。

今回の第56号議案では、その二つを同時に考えなければなりませんでした。

私は、議決前着工という問題を決して軽く考えていません。

その一方で、既に工事が進んでしまった状況の中で、市民へのさらなる不利益を避けるため、今回は第56号議案に賛成するという判断をしました。

賛成したことで問題を終わらせるのではなく、なぜこのようなことが起きたのかを検証し、二度と同じことを起こさない仕組みにつなげていくこと。

それが、今回賛成票を投じた議員として果たすべき責任だと考えています。

議会活動日:令和8年6月19日
令和8年第2回ふじみ野市議会定例会・第56号議案討論

ふじみ野市議会議員
かねはま こうけん(金濵高顕)

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