住まいは、生活を立て直すための土台です。
生活保護制度では、一定の範囲で家賃を支給する「住宅扶助」があります。
一方、住宅扶助が支給されていても、何らかの事情で家賃の支払いが滞れば、入居者本人だけでなく、住宅を貸す側にも大きな問題となります。
そこで使われている仕組みの一つが「代理納付」です。
令和8年3月6日の予算審査では、ふじみ野市で代理納付がどの程度行われているのかを確認し、その上で、保証会社の利用が一般的になった現在の賃貸住宅事情と制度がうまく噛み合っているのかという点を取り上げました。
住宅扶助の「代理納付」とは
通常、生活保護の住宅扶助は生活保護受給者に支給され、そこから本人が家主へ家賃を支払います。
代理納付では、この流れを変え、福祉事務所が生活保護受給者に代わって住宅扶助費を家主などへ直接支払います。
家賃に使うために支給された住宅扶助を、確実に家賃へ充てるための仕組みです。
厚生労働省も、代理納付によって家賃の支払いに対する家主の不安を軽減し、生活保護受給者の居住の安定や住まいの確保につながるとしています。現在は、一定の例外を除き、住宅扶助について代理納付を原則として活用する方向が示されています。
ふじみ野市の代理納付率は30.5%
私は予算審査で、令和8年度の住宅扶助について、代理納付がどの程度行われているのかを確認しました。
市の答弁では、令和8年1月末時点で、
1,512世帯のうち461世帯
が代理納付を利用しており、代理納付率は30.5%でした。
前年の令和6年度末は1,538世帯中473世帯、30.8%でしたので、割合としては0.3ポイント低下しています。
市は、対象となる世帯の状況変化や、年金・就労収入が増えたことで住宅扶助が家賃相当額を満たさなくなり、代理納付できなくなったケースなどを理由として説明しました。
市は家賃滞納対策として代理納付を促進
市からは、家賃滞納の問題もあることから、
「引き続き代理納付を促進していく」
との考えが示されました。
代理納付には分かりやすい利点があります。
住宅扶助が直接家賃として支払われれば、家主にとっては家賃が支払われるかどうかという不安が小さくなります。
生活保護受給者にとっても、家賃滞納によって現在の住居を失うリスクを減らすことができます。
住まいの安定という点では、代理納付を進めることには大きな意味があります。
しかし、私はここでもう一つ、現在の賃貸住宅市場の実態を考える必要があると考えました。
今の賃貸住宅では保証会社の利用が広がっている
以前の賃貸借契約では、親族などに連帯保証人になってもらう方法が一般的でした。
現在は、家賃保証会社を利用する契約が広く使われています。
家賃が支払われなかった場合に保証会社が一定の範囲で立替払いをするため、家主や管理会社にとって家賃滞納リスクを抑える役割があります。
そのため、物件によっては、
「保証会社への加入が入居条件」
となっていることもあります。
ここで代理納付との関係が問題になります。
代理納付と保証会社が両立しにくいケースも
予算審査では私は、保証会社を利用する契約では、その保証会社の契約内容や収納方法によって、福祉事務所から家主へ直接支払う代理納付と両立しにくいケースがあることを指摘しました。
ここは少し注意が必要です。
全ての保証会社で代理納付が利用できない、という意味ではありません。
保証会社ごとの契約や家賃収納の仕組みによって取扱いは異なります。
しかし、家主が保証会社の利用を入居条件としている物件で、その保証会社と代理納付が両立できない場合、
代理納付を利用したい。
しかし保証会社にも加入しなければならない。
という制度上の噛み合わせの問題が生じる可能性があります。
家賃を守る制度が、住宅を借りる障壁にならないか
代理納付の目的の一つは、家賃滞納を防ぎ、住まいを安定させることです。
保証会社も、家主側から見れば家賃滞納などのリスクを抑えるための仕組みです。
つまり、どちらも本来は「安心して住宅を貸し借りする」ための仕組みです。
ところが、この二つがうまく組み合わないと、
家主は保証会社を利用したい。
行政は代理納付を進めたい。
生活保護受給者は住宅を借りたい。
それぞれの考えは合理的なのに、結果として入居できる住宅の選択肢が狭くなる可能性があります。
私は、この点こそ今後確認していく必要があると考えています。
生活保護受給者に住宅を貸す側の不安も考える
住宅確保を考えるとき、借りる側への支援だけでは十分ではありません。
住宅を提供する家主側が、
「きちんと家賃を受け取れるのか」
「滞納した場合にどうなるのか」
という不安を抱えたままでは、生活保護受給者を受け入れる物件が増えにくくなります。
国が代理納付を進めている背景にも、家賃の確実な支払いによって家主の不安を軽減し、住宅提供を促す考えがあります。
これは重要な視点です。
生活保護受給者の住宅確保を進めるためには、
「受け入れてください」
と家主に求めるだけではなく、
「安心して貸せる仕組みをどうつくるか」
まで考える必要があります。
制度ではなく「実際に借りられるか」を見る
行政には住宅扶助があります。
代理納付という家賃滞納を防ぐ仕組みもあります。
民間側には保証会社という仕組みがあります。
それぞれを見ると、住宅を安定させるための制度は整っているように見えます。
しかし、市民にとって重要なのは制度の数ではありません。
実際に住まいを探したときに、
「この制度なら安心して貸せます」
と家主に思ってもらえるか。
そして、
「生活保護を利用しているから借りられる住宅がほとんどない」
という状態になっていないか。
制度が現実の住宅市場の中で機能しているかを見る必要があります。
今回の予算審査で確認できたこと
令和8年3月の予算審査では、令和8年1月末時点で1,512世帯中461世帯が住宅扶助の代理納付を利用し、代理納付率は30.5%であることを確認しました。
前年は30.8%で、市は家賃滞納対策の観点から今後も代理納付を促進する考えを示しています。
その上で私は、現在の民間賃貸では保証会社を利用する契約が広がっていることを踏まえ、代理納付だけを進めるのではなく、保証会社との関係を含めた現在の住宅事情を調査し、どのような方法が住宅確保につながるのか検討する必要があると指摘しました。
「家賃を払える仕組み」から「住まいを確保できる仕組み」へ
代理納付は、家賃滞納を防ぐために有効な制度です。
今後も活用を進めることには意味があると考えています。
一方で、本当の目的は代理納付率を上げることではありません。
生活保護を必要とする方が、安定した住まいを確保し、そこで生活を続けられることです。
そのためには、
代理納付が利用できるか。
保証会社を利用できるか。
家主が安心して住宅を提供できるか。
実際に入居できる物件が確保されているか。
こうした一連の流れを見る必要があります。
住宅市場の仕組みは以前とは変わっています。
行政の制度についても、その変化に合わせて「今の住宅事情に合っているか」という視点で確認することが大切です。
家賃滞納を防ぐことと、住まいの選択肢を狭めないこと。
その両方を実現できる仕組みになっているか、今後も確認していきます。
議会活動日:令和8年3月6日
令和8年第1回ふじみ野市議会定例会・予算審査
ふじみ野市議会議員
かねはま こうけん(金濵高顕)



